立ち耳とは?

「立ち耳」とは、顔を正面から見た場合に耳が左右に指で引っ張ったようなっている耳介(耳)の変形のことを総称して言います。

耳介軟骨の中の対耳輪(耳輪に向かってYの字に上脚・下脚に二又に分かれている)の上脚の湾曲が不十分で曲がりが弱く、耳を後頭部へ向かって寝かせる力が弱かったり、耳介の根元である耳甲介軟骨全体が、頭蓋骨から立って出ていたりして、耳介全体が起き上がった結果、耳が前方に向いてしまっている状態を言います。

耳が大きく見えて目立つために気にする方も多いようです。尊敬する法政大学の江川卓先輩(田牧院⻑の先輩)の耳がそのように表現されることも多いようです(実際には江川先輩は立ち耳ではありません)。

正面写真で、外観上(見た目上)の耳の突出(左右の張り出し)から、立ち耳と思い受診される方が多くいらっしゃいます。しかしながら、保険診療上は立ち耳の診断基準(定義)が存在し、診察時に診断基準に沿って手術が決まります。

立ち耳の診断基準(定義)

①cephalo-auricular angle > 40度

頭頂(頭の上)から見て、耳介全体が頭蓋骨(側頭部や乳様突起部)に対して40度以上ある場合

②mastoid-auricular distance > 2.5cm

耳介(耳)の最も外側が頭蓋骨(乳様突起部)より2.5cm以上離れている場合

③scapho-conchal angle > 150度

耳介軟骨を頭頂(頭の上)から見て、頭蓋骨からの2種類の角度(α + β)の合計が150度以上ある場合

上記の定義の中から、一つないしそれ以上を認める場合「立ち耳」との診断されます。
治療は軟骨の変形に対して矯正を行う手術となります。(治療の流れを参照)

あなたは立ち耳?簡単セルフチェック

「私の耳は立ち耳なのかな?」と不安に思っている方もいらっしゃるかもしれません。
厳密な診断は医師にしかできませんが、ご自宅で簡単にできるセルフチェックをご紹介します。

1.耳の角度をチェック
  • 頭を正面に向けた状態で、鏡でご自身の耳と頭の側面との間の角度を確認してください。
  • 耳と頭の角度が40度以上ある場合、立ち耳の可能性があります。
2.耳の張り出しをチェック
  • 頭を正面に向けた状態で、定規などを使って耳の最も外側から頭までの距離を測ってみましょう。
  • この距離が2.5cm以上ある場合、立ち耳と診断される可能性があります。

もしセルフチェックで当てはまる項目があった方は、一度専門医にご相談ください。
当院では、患者様のお耳の状態を丁寧に拝見し、正確な診断と最適な治療法をご提案します。

こんな方におすすめ

  • 耳が左右に張り出していてミッキーマウスの耳のような印象がある方
  • 耳の形状に左右差がある方
  • 耳輪部(耳上部位)の左右の左右差がある方
  • マスクが掛かりにくく鈴に外れてしまう方
  • ヘルメットを装着する際に耳が邪魔(痛みもある)になってしまう方

立ち耳がもたらす見た目の悩み:耳が大きく見える、横顔が気になる

立ち耳は、「耳が大きく見える」「横顔が気になる」など、患者様のコンプレックスになりやすいデリケートな悩みです。
ご本人は気にしていなくても、周囲から「ミッキーマウスみたいだね」と言われ、傷ついた経験がある方もいらっしゃるかもしれません。

人前で髪をまとめるのが嫌だ

耳の張り出しを隠すため、いつも髪を下ろしていたり、帽子を被る癖があったりしませんか?風が吹くたびに耳が目立ってしまうのではないかと不安になる方もいらっしゃいます。

横顔に自信が持てない

正面からは気づかれなくても、横から見られると耳が強調されてしまうことに悩む方は多くいらっしゃいます。

マスクやヘルメットがうまく使えない

耳が前に張り出しているため、マスクのゴムが耳にかかりにくく、すぐに外れてしまったり、ヘルメットをかぶると痛みがある、といった実用的な不便さを感じることもあります。

当院は、こうした見た目に関する悩みや不便さが、患者様の自信や日常生活に影響を与えることを深く理解しています。
私たちは、耳の形を整えるだけでなく、患者様が心の底から自分に自信を持てるよう、全力でサポートいたします。

治療の流れ

  • Step.01

    診察

    医師によるカウンセリングを行います。
    その際、耳の形状が保険診療に適合しているかを、診察してきます。また、その方に合った方法で、できることできないことをこの際にお伝えします。
    ご不安なことがありましたら、お気軽にご相談ください。保険適応である場合には、治療原理としての治療方針、治療方法、リスクなどを詳しく説明します。

  • Step.02

    治療

    正確な写真の撮影を行います。
    引き続き、デザインを行いますが、片側症例であれば、できるだけ正常側に合わせるようにデザインします。
    両側症例であれば、左右できるだ同じようにデザインしていきます。

    立ち耳修正術では、耳介の裏から皮膚を20-25mm程度切開し、直視した状態で耳介軟骨をナイロン糸で縫合することで矯正します。(当院では治療結果が不安定な埋没法は行っておりません。) 皮膚縫合を行った後に、必要な場合に限りボルスター固定(内出血予防の固定を装着)を行います。

  • Step.03

    術後

    術後には耳の形に添ってガーゼを1−2週間の固定をします。術後1週間で抜糸を行います。
    術後の生活では、術後の変形を予防するために、就寝時にドーナツ枕の装着(就寝時に1〜4 週間程度)を行います。術後に、看護師より装着方法を説明していきます。

    手術時間:1時間半(片側の場合は1時間)
    麻酔:局所麻酔 術後処置:入浴は翌日から、自己処置として翌日からは良く洗ってください。
    生活に制限は殆どありません。また稀に術後に1−2週間のボルスター固定を行なうこともあります。

なぜ切開法?埋没法や切らない治療の限界

立ち耳の治療法として、切開しない「埋没法」や「切らない治療」があると耳にした方もいらっしゃるかもしれません。しかし、当院が切開法にこだわるのには、明確な理由があります。

埋没法や切らない治療は、皮膚の表面から糸を埋め込んで軟骨を固定する方法です。手軽に受けられるというメリットがある一方で、再発リスクが非常に高いというデメリットがあります。

なぜなら、立ち耳の根本的な原因は、耳の軟骨の形そのものにあるからです。糸だけで軟骨の形を変えても、時間とともに元の形に戻ろうとする力が働き、数カ月〜数年で元に戻ってしまうことが珍しくありません。

当院が行う切開法は、耳の裏側を数センチ切開し、直接軟骨を確認しながらナイロン糸で形を整えて縫合します。これにより、軟骨同士が癒着することで正しい位置で固定され、形が維持されるため、後戻りは原則起こりません。

一時的な効果ではなく、永久的な改善を希望される方には、切開法が最も理にかなった治療法だと考えています。

症例紹介

20代前半の立ち耳の症例です。
術前の診察では、scapho-conchal angle が150度で立ち耳との診断となりました。

術前
術後
術前と術後の比較
症例
左右たち耳の症例
治療内容
耳介形成術
リスク
痛み・出血。完全な左右対象にはできない可能性があります。
費用
保険診療

左右差がない立ち耳の症例の経過

  • 手術
    術前

    舟状窩ははっきりとしていません。耳輪脚の上行脚が平坦化していて、結果的にscapho-conchal angleが広くなり立ち耳が目立ちます。
    特に左の写真では写真の角度により強調されていますが、凹凸が少なく立体感がない印象です。

  • 術前デザイン写真
    術前デザイン

    術前のデザインが上行脚の峰に沿って描かれていますが、対耳珠端からどの程度の位置で、軟骨をナイロン糸で固定するかを示しています。

  • 術後1週間写真
    術後1週間

    手術から1週間は、内出血を予防するためにボルスター固定(耳の溝に合わせてガーゼを固定する)を行っています。
    写真では既にボルスター固定は外されいます。
    形態は既に良好であり、立ち耳は解消され、舟状窩の溝が深く形成され、耳輪の上行脚がはっきりと浮き立っています。
    耳甲介腔も深くなっていることがわかります。

  • 術後1ヵ月写真
    術後1ヵ月

    既に完成に近い状態です。しかしながら、この状態で引っ張ってしまうと固定のナイロン糸が外れてしまうと、元に戻ってしまうこともあります。まだ少し生活に注意が必要です。
    ※写真の撮り方で多少差があるように見えます。

  • 術後6ヵ月写真
    術後6ヵ月

    左右差もなく、きれいな形態が出来上がっています。彫刻による遠近法の様な表現ですが、凹凸がはっきりして立体的な印象となっています。

  • 術前と術後の比較写真
    術前と術後の比較

    正面(前方)からの比較で、出てしまっている耳輪部が奥に倒れ込んで、すっきりした印象を与えています。

立ち耳手術後の注意

内出血が耳介の変形(柔道耳)至ることもあるので注意が必要です。術後の固定として、ボルスター固定(耳の溝に合わせてガーゼを固定する)を行って、内出血による変形などを予防することもあります。術後の安静は1-2週間程度は我慢です。

立ち耳の整形の症例紹介一覧へ

術後のダウンタイムと日常生活:安心して過ごすためのポイント

立ち耳の手術をご検討いただく上で、術後の生活について不安を感じるのは当然のことです。
ここでは、術後の一般的な経過と、ダウンタイムを安心して過ごすためのポイントをご紹介します。

術後の経過

術後1週間

腫れや内出血を抑えるために、ガーゼとテーピングで耳を固定します。シャワー(洗髪)は手術翌日の再診後からは可能です。

術後1週間〜4週間

抜糸後も、夜間はドーナツ枕を装着して寝るなど、寝返りによる耳への圧迫を防ぐことが重要です。

術後1ヶ月〜3ヶ月

腫れが完全に引き、耳の形が自然に馴染んでいきます。この間も、無理に耳を引っ張るような行為は避けてください。

日常生活に関する注意点

マスク

手術直後からマスクは可能ですが、耳への負担を避けるため、マスクバンド(後頭部でマスクひも同士を固定する)の使用をおすすめしています。

入浴:

術後1週間は、湯船への入浴は避け、シャワーのみとしてください。

運動

術後1週間は、激しい運動は控えてください。軽めの運動は2週間後から可能です。

ご不明な点や不安なことがあれば、術後も看護師が丁寧にサポートしますので、ご安心ください。

立ち耳治療で選ばれる理由

立ち耳は、顔の印象を大きく左右するデリケートな悩みです。だからこそ、「どこで手術を受けるか」が最も重要になります。当院は、患者様の不安を解消し、心からご満足いただくために、以下のような強みとこだわりを持っています。

1. 日本形成外科学会専門医による確かな技術と豊富な実績

当院は、日本形成外科学会専門医による立ち耳矯正治療を提供しています。
耳の解剖学と形成外科の技術を熟知した専門医が、患者様お一人おひとりの耳の形や顔全体のバランスを考慮し、最適な手術法を提案します。
数多くの症例実績に裏打ちされた、「機能改善」と「美的完成度」の両立を追求します。

2. リスクを最小限に抑える徹底したこだわり

「術後の腫れや内出血」「後戻り」といったリスクは、手術を検討される上で大きな不安要素です。
当院では、患者様の負担を減らすため、以下の対策を徹底しています。

出血を抑える丁寧な手術

術中の出血を最小限に抑えることで、腫れや内出血を軽減します。

万全の術後フォロー

術後の経過観察を丁寧に行い、患者様の不安に寄り添いながら、最後まで責任を持ってサポートします。

後戻り対策

耳の軟骨を直接確認しながら固定を行う切開法は、埋没法に比べて後戻りの可能性を大幅に低減できます。

3. カウンセリングからアフターケアまで患者様に寄り添う医療

当院では、患者様とのコミュニケーションを最も大切にしています。
お悩みやご希望を丁寧に伺うのはもちろん、治療方法やリスク、ダウンタイムについて、患者様が納得できるまで詳しくご説明します。

ご自身の耳の状態や治療についてご不明な点があれば、どんな些細なことでもお気軽にご相談ください。
私たちは、患者様が自信を取り戻し、前向きな毎日を送れるよう全力でサポートします。

料金表(税込価格)

耳介形成術(立ち耳手術)保険診療
外傷性耳垂裂保険診療
耳介軟骨形成を要するもの(片側)¥57,720
耳介軟骨形成を要しないもの(片側)¥29,880
  • 術式など手術の内容によって料金が異なりますのでカウンセリング時にご相談ください。

よくある質問

Q.立ち耳はマッサージや矯正具で治せますか?
A.ご自身で立ち耳を治そうと、マッサージや矯正具を試されている方もいらっしゃいますが、根本的な改善は難しいでしょう。
立ち耳の主な原因は、耳の軟骨の変形です。マッサージや矯正具では軟骨の形を永続的に変えることは困難なため、一時的な効果しか得られず、外すと元に戻ってしまうことがほとんどです。また、無理な力を加えると軟骨や皮膚を傷つけるリスクもあります。
より確実な改善を望む場合は、専門医へのご相談をご検討ください。
Q.子供の立ち耳は、いつ頃手術するのが良いですか?
A.お子様の立ち耳は、耳の軟骨の成長が落ち着く小学生以降に手術を検討することが一般的です。
特に、外見へのコンプレックスが原因で精神的なストレスを抱える前に治療を行うことで、お子様の健やかな成長につながります。無理に治療を強制するのではなく、まずはお子様の気持ちに寄り添い、ご家族で話し合うことが大切です。
当院では、お子様と保護者の方、双方にご納得いただけるよう、丁寧なカウンセリングを心がけています。
Q.立ち耳の手術をするときピアスは邪魔になりますか?
A.立ち耳の治療では、通常のピアスでしたら問題ありません。手術の際は外して頂きますのでご了承ください。
Q.立ち耳が保険診療かどうかの基準が分かりません。判断する良い方法はないのでしょうか。
A.完全な診断基準は、医師による診察でないと判断が付きません。しかしながら、頭頂部(頭の 上)から見て、耳介(耳全体)と頭の骨の角度(cephalo-auricular angle)が40度以上 あれば、立ち耳と診断がつきます。
Q.立ち耳の手術を糸だけで行う「埋没法」や「切らない方法」があるとのことですが、本当でしょうか。
A.耳介軟骨の固定は確かに糸で固定しています。軟骨の矯正には、軟骨同士が接することで癒合・癒着することで形態を維持させますから、皮膚切開なしの固定では、軟骨同士が接することが できなく再発する可能性が高くなります。また、盲目的に糸で固定することも良い結果が得られない可能性が高いと思われます。
Q.手術の直後からマスクは可能でしょうか。
A.可能です。ただし、抜糸までの自己処置期間では少しの工夫が必要となりますので、術後に説明させて頂いております。
Q.抜糸が必要なのでしょうか。
A.術後1週間で抜糸を行います。しかし、非常に細いナイロン糸ですから、スムーズに抜けて痛みは殆どありません。
Q.傷跡は目立つのでしょうか。
A.立ち耳の手術では、切開部は耳の後面に20-25mm程度切開します。
耳の輪郭に沿って切開しますから分かり難いことに加えて、非常に良いことに立ち耳が改善し耳が寝ることで、傷が隠れてしまいます。
ほとんどの方は傷が分からない程度となります。そもそも、形成外科医が行いますから傷自体は非常にきれいです。
Q.立ち耳の手術をするときピアスは邪魔になりますか。
A.立ち耳の治療では、通常のピアスでしたら問題ありません。
手術時は一時的にお外しいただくこともありますので、ご了承ください。
ドクターズ・ファイル トピックス(立ち耳)