• 耳介形成術

両側の立ち耳に対して耳介形成術(保険診療)を行った症例

正面写真から外観上の耳の突出を確認することで、立ち耳と思い受診される方が多くいらっしゃいます。
しかしながら、保険診療上はしっかりとした立ち耳の定義が存在し、その診察の際にその定義に沿って手術が決まります。

<立ち耳の定義>
①cephalo-auricular angle が40度以上
②mastoid-auricular distance が2.5cm以上
③scapho-conchal angle が150度以上(耳甲介と)

上記の定義の中から、一つないしそれ以上の範囲でとなった場合に「立ち耳」との診断が付けられます。

Before

術前

After

術後
症例
左右たち耳の症例
治療内容
耳介形成術
リスク
痛み・出血。完全な左右対象にはできない可能性があります。
費用
保険診療

両側の立ち耳に対して耳介形成術(保険診療)を行った症例の経過

  • 術前

    術前

    術前の診察では、①cephalo-auricular angleは40度以上、②mastoid-auricular distanceが3.0cm以上、③scapho-conchal angleが165度、と全ての項目において立ち耳との診断となりました。
    耳の解剖名称から、舟状窩ははっきりとしていません。また、耳輪脚の上行脚が平坦であり、結果的にscapho-conchal angleが広くなり立ち耳が一層強くなってしまっています。

  • デザイン

    デザイン

    術前のデザインが上行脚の峰に沿って描かれています(十字のマークは固定部位を示します)が、対耳珠端(マーキングあり)からどの程度の位置に軟骨の固定をするかを、決めています。

  • 術後1週間

    術後1週間

    手術から1週間は、内出血を予防するためのボルスター固定を行います。写真はボルスター固定(耳の溝に合わせてガーゼを固定する)が外された直後であり、手術に必要なデザインの痕跡や若干の出血も認められます。
    形態はすでに、立ち耳は解消され、しっかりと寝てしまっています。左耳の特に上行脚は腫れが強く出て、輪郭が不鮮明です。

  • 術後1ヵ月

    術後1ヵ月

    術後1ヵ月では、すでに縫合固定によって固着する位置に止められた軟骨同士は、ほぼ固着してしまうため、簡単に引っ張っても固定糸が切れても元に戻ることはありません。
    しかしながら、この時点では思い切り引っ張ると軟骨が避けてしまい固定が外れてしまう可能性がありますので、ラグビーや柔道などの激しいスポーツは難しいかもしれません。
    左右の角度(左が少し曲がってしまっています。)が若干違いますが、上行脚に注目すると峰がシャープになっています。

  • 術後3ヵ月

    術後3ヵ月

    手術は3ヵ月で完成としています。この時点では何をしても外れてしまうことはないので、どのようなスポーツを行っても問題ありません。
    ※左耳は手術後はピアスをされてているので、ピアス部分を隠しております。

  • 術前と術後の比較

    術前と術後の比較

    本症例は、上行脚に着目して、その部位を目立つように比較しています。
    耳甲介腔がきれいに湾曲していて良い結果となっています。
    バランスの良い耳介が形成されています。

  • 術後解説

    術後解説

    手術をすることで、上行脚がしっかりと折り込まれ、峰がはっきりと突出していることがわかります。
    術後の評価として、βが狭くなり立ち耳が改善され、綺麗な耳介が形成されるのです。

立ち耳手術後の注意

内出血が耳介の変形(柔道耳)至ることもあるので注意が必要です。術後の固定として、ボルスター固定(耳の溝に合わせてガーゼを固定する)を行って、内出血による変形などを予防することもあります。術後の安静は1-2週間程度は我慢です。

日本形成外科学会専門医
医療法人社団 聡明会 理事長

田牧 聡志