• 耳介形成術

右のスタール耳

右のスタール耳の症例です。
スタール耳とは、耳輪部(耳の上部曲がった形状のこと:車輪になぞられて命名)に向かう、耳輪脚上下脚に対して、三番目の第3脚が存在する変形した耳介を言います。東北大学形成外科の初代教授である山田敦名誉教授(当院田牧院長の恩師に当たります)による分類がなされていて、

Ⅰ型:後上方へ向かう第3脚の稜線が鋭角をなす。
Ⅱ型:後上方へ向かう第3脚が鈍角である。
Ⅲ型: 後上方へ向かう第3脚の隆起が幅広く両側に2つの稜線がある。この場合、耳輪も広範囲に欠損する。なお稜線がはっきりせずなだらか な突隆になると、扁平耳 (scaphoid ear) に移行する。
Ⅳ型 : 第3脚が後下方へ向かう。

とされています。このうちⅠ型がもっとも多く見られます。

Before

After

症例
右スタール耳
治療内容
楔状切除術の変法術
耳輪部周囲を切開し変形した軟骨を除去し、皮膚(皮弁)を切除することなく弛みを持たせて、耳輪部の厚さを確保しました。対耳輪上脚に切開線がなく、見た目がきれいに作れる方法です。
リスク
内出血による耳介の変形治癒、疼痛、腫脹
費用
保険診療

右のスタール耳の経過

  • 術前 横

    Ⅰ型は第3脚の走行により、さらに4つの亜型に分けられる。(極めて専門的な記載です)
    第I-a型:第3脚が対輪の上・下脚分岐部付近に発し、直上方へ真っ直ぐに向かうもので対輪上 脚はまったくない。いわゆるサチュロスの耳様になる。
    第I-b型:上・下脚分岐部付近より斜めに後上方へ走る。ややS状に弯曲している。もっとも典型的な形である。
    第I-c型:水平に後方へ走る。変形が著しくかつ強固で、上方の耳介が折れ曲がっている。指で圧迫しても変形の矯正は困難である。
    第I-d型:上・下脚分岐部付近ではなく、かなり上方、上脚の中央付近よりほぼ水平に後方へ向かう。これは埋没耳や折れ耳に合併する場合が多いい。
    また第3脚が2つ存在することもある。

    本症例は、Ⅰ型の中でも第3脚が上脚の中央部から後方に水平に向かっているd型の分類となります。

  • 術前 前

    前方から見ると、変形が際立っていることが確認できます。

  • デザイン

    耳輪部に沿って切開線を描き、予定としている耳介軟骨の切除デザインを点線で描いています。

  • 術後2週間

    切開部位はほとんど見えない位置に隠れてしまっています。また、よくある失敗例では耳輪部が薄くなってしまうことですが、上手く厚みを持たせてあり、より自然になっています。術後2週間ですから、若干腫れは残っています。

  • 術後2ヵ月

    腫れていた部位も解消してすっきりしました。

  • 術後3ヵ月 横

    非常に奇麗であり完成形です。

  • 術後3ヵ月 前

    前方からの印象も変わりました。

スタール耳の治療

街を歩いていると、稀に見かけるスタール耳ですが、しっかりとした治療で良くなります。一般的には皮膚の切除と合わせて行うことが多いのですが、当院では状況を判断して、できるだけ皮膚は切らないように心がけております。

日本形成外科学会専門医
医療法人社団 聡明会 理事長

田牧 聡志